第176章

高橋小春は笑いながら説明した。「北村社長のものを探していたんです。どうして入るときにノックもしないの?」

山田澪は唇を軽く噛んで、もう一度北村健の方を見た。

彼は少し眉をひそめたが、何も言わなかった。

山田澪は頭を下げ、書類を差し出した。というより、机の上に置いただけで、軽く会釈をして、背を向けて部屋を出た。

高橋小春は彼女がオフィスを出ていくのを見届けてから視線を戻した。顔を下げると、北村健が自分を見つめていることに気づいた。

「どうしたんですか、北村社長?私の顔に何かついてますか?」高橋小春は自分の頬に手を当てた。

北村健の視線はしばらく彼女の顔をさまよい、高橋小春はなんとな...

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